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2006年1月 3日 (火)

評論:市民社会フォーラムの活動報告

市民社会フォーラムHP掲載の下記評論
http://homepage3.nifty.com/civilsocietyforum/page118.html
を転載いたします。
市民社会フォーラムの活動報告:学問・運動・市民の言論空間
岡林信一(市民社会フォーラム事務局)
 『経済科学通信』編集局から依頼を受けましたので、市民社会フォーラム(以下、フォーラム)の取り組みについて紹介します。
1.市民社会フォーラムの趣旨
 フォーラムは、2002年3月に「分野を越えた学習・交流と社会への問題発信をしよう」と意気投合し、座長の楠真次郎君をはじめ立命館大学の学生が集って結成されました。私はオリジナルなメンバーではなく、彼らとは一世代上の社会人でしたので、彼らが就職・院進する時点で、学内での研究活動から、幅広い社会学習活動として拡張するよう提案し、現在のスタイルが確立しています。
 フォーラムは、下記呼びかけ文の趣旨に賛同できる人々と繋がっています。
「今、わたしたちは、世界規模の環境悪化や南北の経済格差、止むことのない戦争と地域紛争および核戦争の脅威、食料や医薬品の圧倒的不足、教育からの疎外、女性・児童への人権侵害、国内においても、失業と不安定雇用の増加や社会保障の切り捨て、自衛隊の海外派兵に象徴される平和憲法の否定など、憂慮すべき多くの問題に直面しています。
 一方で、国境を越えた民衆の連帯や政治・行政への市民参加など、あらたな社会運動や社会参加の動きもおこりはじめており、わたしたちは、その流れに確信をもち、協同を表明します。
 わたしたちは、信条や立場・所属を越え、わたしたちが直面している様々な社会問題に関心をもつ個人とともに、議論と認識・経験の交流を行い、互いの発展と活動の結びつきを通じ、社会問題の解決と新たな社会の創造を目指します。
 わたしたちは、多様な個人による多様な社会問題の討議を通じた市民ネットワークづくりと新しい社会創造に、心からの参加を呼びかけます。」
 この呼びかけ文をもとに、社会人から学生、研究者、NPO・運動団体関係者など多種多様な個人とともに、様々な社会問題をめぐる学習や各分野での経験交流、情報の交換を目的に、思想的・政治的立場の多様性を前提にして、より多くの、とりわけ若い世代の人たちとのネットワークづくりを目指しています。一言でいえば、学問と運動ならびに市民との接点を提供する触媒的役割を担う、「社会学習運動」といえるでしょう。
 具体的な取り組みとしては、時事的な問題について専門家・活動家などに話題提供いただき討議する「例会」、より理論的な研究会として「社会科学研究会」をルーチン化しています。そして、多彩・多元・多様な論者による「評論」コーナーを含めたホームページ(HP)をベータベースとして活用しています。また、現在200人以上が登録しているメーリング・リスト(ML)での意見交換・企画案内も活発に行われています。
 互いに顔を付き合わせた学習会を定例化するとともに、物理的に集うことが困難な方々ともMLとHPを通じて、交流を深めています。
2.活動内容(1) 社会問題についての学習例会
 現在では、毎月の例会に十数名もの方々に参加していただいています。新しい順番から、最近の例会企画(05年9月現在)は下記の通りです。

 第32回例会 徹底討論「若者による神戸再生論」-若者と神戸市政学習会(5) 05年9月 於:神戸
 第30回例会 神戸の文化活動と文化行政―「若者と神戸市政」学習会(3) 05年7月 於:神戸 (フィールドワーク 神戸空襲の史跡を探る)
 (フィールドワーク:神鋼石炭火力発電所と公害)
 (フィールドワーク:「非核の港」神戸・遊覧船の旅)
 第25回例会 地域に根ざす自治の担い手としくみづくりとは 05年2月 於:滋賀県草津市 (フィールドワーク:くさつ感風ツアー)
 第24回例会 大震災10年の教訓―災害列島日本の生活保障 05年1月 於:神戸
 (交流:プラザ5の震災復興の取り組み)
 第23回例会 「《弱者》としての若者」 04年12月 於:神戸
 (フィールドワーク 大正区・浪速区 人権・文化遺産ツアー )
 例会はすでに30回を超えて開催し、最近は神戸が多いですが、京都、大阪など近畿一円で催しています。遠方からも参加いただいている方もいらっしゃるので、机上での議論だけでなく、開催地やテーマに関連したフィールドワークも催し、夕食交流会も含めて、小旅行的な余暇活動としても位置づけています。
 4回開催している東京例会では、関東圏の平和グループとの連携をはかり、高知例会は知自治体問題研究所との合同研究会となりました。
 フォーラムは趣旨に賛同できる個人・団体と連携をはかるよう、柔軟かつオープンな企画を位置づけています。
3.活動内容(2) より理論的な社会科学研究会
 例会では幅広い市民を対象にした学習会を位置づけていますが、社会科学研究会(社研)では、研究者との連携も位置づけています。研究会履歴は下記の通りです。
第7回社会科学研究会 自治体の産業雇用政策
報告(1) 自治体ができる地域産業政策
 本多 哲夫さん(大阪市立大学助教授)
報告(2) ニート対策の現状と課題
 樋口 明彦さん(大阪大学院生)
報告(3) 自治体ができる労働政策
 前田 定孝さん(時間短縮研究所事務局次長)
第6回社会科学研究会
報告(1)「古層」と「飛礫」-丸山思想史と網野史学の一接点
 冨田宏治さん(関西学院大学教授)
報告(2)背広の作業着性―公務労働をめぐって
 前田定孝さん(時間短縮研究所事務局次長)
第5回社会科学研究会
「グローバリゼーションと貧困化する市民社会-多様性から収斂へ」
神谷 章生さん(札幌学院大学教授)
第4回社会科学研究会
「ノルベルト・ボッビオとエリート思想の関係」
谷本純一さん(法政大学院生)
 当初は、研究書1冊をレジメにして報告する読書会でしたが、研究者との連携をはかるためにも、フォーラムの趣旨に理解ある方に話題提供いただいています。
4.活動内容(3) 映画鑑賞会
 まだ本格化していませんが、机上での学習だけでない、文化を通じての批評として、映画鑑賞会も行っています。DVDを借りて観る場合もありますが、公開中の社会派作品を映画館で観て、感想交流会をしています。
 読書であれ映画であれ、一人でたしなむこともできるものを、集団的な交流にして、そこに社会科学的なスパイスを振り掛けることも、これから重視しようと考えています。
5.活動内容(4) HPとMLでの交流
 例会・社研などの企画とともに、フォーラムの企画に参加いただいた方やネット上で知り合った方などにMLに登録いただいて、日常的な交流・情報発信をはかっています。
 当初は、HPの更新情報の紹介や企画案内を発信する程度でしたが、「多重声音」を重視するフォーラムらしく、映画鑑賞から選挙に至るまで硬軟あい混ぜて、多元・多彩な交流がはかれるようになりました。
 直接面識がなくとも、北海道から九州まで老若男女さまざまな個性ある方々が参加されています。
6.活動内容(5) 若者による神戸再生論
 これらの諸々の活動の中でも、05年は一貫性をもって取り組んでいるものがあります。それは、10月23日が投票日の神戸市長選挙を念頭に、若者の立場から神戸市政を変えるための提言をまとめることです。
 フォーラムは、社会学習運動であり、それ以上でもそれ以下でもないので、諸々の運動とコンタクトはとりつつも自立しており、フォーラムが主体となっての政治運動を行うことはしません。なぜなら、フォーラムは会費も会則もない、「組織」ではなく、緩やかな「ネットワーク」であり、会を代表して政治的要求を掲げることはできないし、するべきではないからです。
 ただ、選挙というイベントを重視して、地方自治のあり方を継続して学習し、その成果を公表することは意味のある活動なので、05年は、例会企画は神戸市政を軸に連続開催しました。
 神戸で例会を重ねる度に、「若者による神戸再生論」の内容をバージョンアップさせ、これをHPに公開し、例会やMLでも意見交換をはかっています。
 なぜ神戸市政にこだわっているのか。まず、私と座長らが神戸在住の勤労者であり、神戸でもフォーラムへの参加者を増やして、若者のネットワークを地元から広げたかったから。そして、選挙を媒介にして日本社会の民主的変革の「風穴」をあけるためには、目前の政令市長選挙がある神戸での市民活動との連携が重要だと考えたからです。
 私たちが創りあげた、「若者による神戸再生論(最終案)」の骨子は以下の通りです。
====
若者による神戸再生論(最終案)
市民社会フォーラム座長 楠真次郎
1.ムダな大型開発をやめ、市民生活に予算を
(1)神戸空港の本体事業や関連事業(ポートライナー延伸、海上アクセスの再開など)をやめ、これ以上の市税のムダを増やさないこと。
(2)多額の予算を投入し、医療を産業化しようとする医療産業都市構想の凍結・見直しをすること。
(3)中央市民病院の移転を中止し、現状維持か現地改修を行うこと。
(4)無駄な事業をすすめている外郭団体への出資をやめること。
(5)「創造的復興」のもとに進めているバブル期型の大型開発をやめ、被災者した住民が戻り、元の生活を営めるような復旧施策を行うこと。
(6)大型開発を「聖域」とする今の予算の使い方を転換し、市民生活を第一にした予算編成、税金の使い方を行うこと。
2.非核・平和都市にふさわしい平和行政を
(1)神戸大空襲の記録や非核・平和を発信する資料館を創ること。
(2)「神戸方式」が決議された3月や広島と長崎に原爆投下された8月に、毎年市独自の核兵器廃絶に関した企画やアピール声明の発表、などを実施すること。
(3)非核「神戸方式」を条例化すること。
(4)広島市長が提唱する「世界平和市長会議」に賛同し、核兵器廃絶に向けた自治体外交を展開すること。
(5)異文化交流に平和教育を位置づけ、高等教育での国内・海外研修、交換留学などを市として実施すること。
(6)平和憲法の理念を守り、若者を犠牲にするいかなる戦争協力にも反対すること。
3.若者の働く場を増やし、働きがいあるまちづくりを
(1)福祉・教育分野など公務・公共分野で、行政自身が積極的に若者の任用の枠を増やし、または新規の雇用の確保に努めること。
(2)国に対し、最低賃金の大幅引き上げを求めること。
(3) 市の業務委託について、リビングウェッジ条例や政策入札制度を導入すること。
(4)民間企業が積極的に若者の雇用確保に取り組むよう、企業の若者雇用を奨励する条例を制定すること。およびそのための何らかの給付制度などを創設すること。
(5)若者の雇用促進に特化した施設を全ての区に設置すること。
(6)神戸の伝統・地場産業への若い世代の就労支援や、起業家・自営業者への支援施策をとること。
(7)市内で就職する場合、市内専門学校の授業料の無利子貸与や職業訓練施設を増設すること。

4.保育・教育・医療の充実で、健康でくらせ子育てしやすい環境を
(1)待機児童の解消を目指し、市が責任をもって保育所を増設すること。
(2)公立保育所の民間移管を行わないこと。
(3)低所得、中間所得世帯の保育料をさらに安くすること。
(4)公立、民間とも保育士の労働条件を改善するよう、補助金等を増額すること。
(5)市内各区へ病後児保育施設を増設するよう助成を促すこと。
(6)小学校全学年に30人学級を導入すること。
(7)中学生までの外来・入院の窓口負担を無料にすること
(8)国民保険料減免制度の対象を拡大し、低所得者の国民保険料の減免額を引き上げること。
(9)市内の専門学校や大学に通学する市内一人暮らしの学生に対し、家賃補助制度を設けること。
5.若者の文化・芸術、スポーツ活動の推進、若者の自主的で多様なコミュニティの育成を
(1)文化・芸術、スポーツなどの自主活動を支援する活動助成を拡充すること。
(2)学生などの文化・芸術、スポーツ活動に対し、市内公共施設の使用料を軽減すること。
(3)市の責任を回避する、安易な指定管理者への管理・運営委託を行わないこと
(4)市の責任による若者などの文化・芸術団体への運営委託で、各種イベント開催などのインセンティブを与えていくこと。
(5)まちの空きスペースを市内の団体に、自由な表現の場、憩いの場、活動の場として提供すること。
(6)芸術関連の教育施設やセミナーを積極的に設置・開催すること。
6.若者の意見が反映される市政参加の促進を
(1)常設型住民投票条例を制定し、投票権を20歳未満にも認めること。
(2)市の施策の立案段階から市民との協議の場を設け、情報提供と説明の義務を市民の納得できる水準で徹底的に果たすこと。
(3)住民投票も含めた、定住外国人の神戸市への参加の権利を確保する条例を制定すること。
(4)地方自治体選挙への定住外国人の選挙権を認めるよう、公職選挙法改正を国に対して要請すること。
(5)空港建設は中止し、空港島の跡地利用については、平和資料館やイベント会場など、若者をはじめ広範な市民から意見を募ること。
(6)市の審議会、委員会、懇話会などで市民公募枠に青年代表を必ず入れること。
======
7.今後の展望
 フォーラムは社会運動に強い関心をもち連携しつつも、社会運動の中心的主体になることを想定していませんが、運動と学問の中に組織化されない市民にもネットワークを広げ、開かれた言論空間を構築することを目指しています。
 いわば社会的活動の「ニッチ」産業として、民主的な変革主体形成を側面的に促すような、市民社会からのサイド・イフェクトの機能を担っていきたいと考えています。
 社会を民主的に変革するためには、政党や労働運動や平和運動をはじめ、諸々の階層的・階層横断的な運動体の発展が最も重要でしょう。私も、職業としては医療運動の分野で、その末席を汚しています。
 また、社会変革のためには、時代にふさわしい理論・思想も不可欠でしょう。これにはアカデミズムからの発信が大切ですが、それに耳を傾ける聴衆を広げなければならないでしょう。
 グローバルには世界社会フォーラム、ナショナルには九条の会など、従来にないネットワーク的な運動が広がっており、フォーラムもそれらのモードに示唆を受けていますが、「9・11」から4年も経った今でも、ブッシュや小泉を権力の座から引きずり下ろせていません。さらに、既存のやり方だけにとらわれない、想像力ある営為が必要ではないでしょうか。
 私はフォーラムのような社会変革にとっては副次的であるにせよ、運動や研究の「タコツボ」社会に安住せず地道な学習活動を広げる志向が、日本社会にもっと広がれば、もう少しましな世の中になるのではないかと思い、これに賭けています。
 そのためには、IT媒体も「手段」として重視しています。
 私にとって、職業としての医療運動は「本店」であり、フォーラムは自由時間を活用した「夜店」です。学問についてもアマチュアであり、研究者の生産物を「消費」するための媒介役ぐらいしかできません。しかし、学問の素人でも、道楽・趣味としての「夜店」であっても、目的意識さえあれば、ITも駆使して多くの人と結びつくことが可能です。それも自腹で。
 こうした成果は、可能な限りHPにデータベースとして残しています。
 『経済科学通信』の読者の皆様も、私たちの取り組みに興味がございましたら、ぜひ下記HPをご笑覧いただき、メールにてご意見いただければ幸甚です。
市民社会フォーラムHP
http://homepage3.nifty.com/civilsocietyforum/

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